全く利用していない空き家でも、維持し続けるにはそれなりの管理や費用がかかることをご存知でしたか。
親が住んでいた家に住むことができなくても、「思い出がいっぱい詰まっているから」と、空き家をそのままにしておく人が多くいます。しかし、建物は人が住んでいない状態で放置すると、急速に傷んでいきます。
また、家の中だけでなく景観や衛生面でも問題が生じることも少なくなく、近隣の方へ迷惑をかけてしまい、トラブルにつながることもよくあります。空き家のトラブルを防ぐためには、適切に管理をすることが大切です。しかし、空き家になった家を維持・管理するには、それ相応の維持費がかかります。
ここでは、住んでいない空き家を維持のに、どれくらいの費用が必要なのか、また、費用以外にも定期的に管理を行うことで発生する時間や労力について説明していきます。
なぜ、空き家の管理が必要なのか
空き家管理には、定期的に管理を行って空き家の状態の把握することと維持することが大切です。
定期的に建物の状態を確認することによって、雨もりや外壁の崩れ、屋根や軒先の壊れなどの建物の異常を早い段階で発見することができるからです。雨もりは発見が遅れると、建物の耐久性に大きな影響がでてしまいます。
また、外壁の剥がれや、軒裏の破損などはそのまま放置しておくと、通行人に怪我をさせてしまう可能性もあります。台風や強風がきたときに、それが飛んでしまい人に怪我をさせたり、近隣の家に被害を出してしまうこともあるのです。
そして、建物を長期間使用することなく、閉め切った状態にしておくと、建物内に湿気がこもってしまい、建物自体の老朽化が急速に進行してしまいます。家は定期的に換気を行って、屋内にこもっている湿気を逃がす必要があります。
空き家にしておくと家の価値は1～2年で使い物にならなくなる？
空き家にしておくとなぜ価値が下がるのでしょうか。住んでいなければ、そのまま汚れることもなく維持できてしまうようにも思えるのですが、人が住んでいない家は確実に傷んでいきます。また、空き家となっている多くの家は、築年数が長く、木造建築の場合が多いため、すでにあちこち傷んでいたりします。さらに、高温多湿な日本の気候によって、家の老朽化をさらに加速させてしまいます。
空き家が及ぼす家の中の変化
まず、家の中の状況を考えてみましょう。
家を閉め切っておくと、熱や湿気が室内にこもり、木製部分が傷みます。熱や湿気がこもっている室内環境は、木を餌にする虫にとって快適なため、活発に活動できる状況を生み出してしまいます。そのため木製の部分の被害は広がり、傷みが激しくなっていくのです。空き家がシロアリなどの被害で住めない状況になるという話を聞いたことがあるかもしれません。
シロアリは湿った木材を餌として生息しています。管理されていない空き家は建材などの木材が湿っているため、シロアリにとって大変住みやすい場所になっています。シロアリが耐震性に影響を及ぼす柱・筋交い・土台を構成する部材を食べられてしまうと、空き家の耐震性が低下し、最悪の場合倒壊の危険性があります。
水回りは、使い続けないと排水管内の水が枯れ、空洞となった部分から臭気が室内に入ってしまいます。また、長い期間使用していない給排水管やガス管は、管の内側に付着したヘドロや異物の乾燥や硬化により、ひび割れもしくは破損しやすい状態になってしまいます。
そして、水道管が干上がると、消毒された水が流れていれば上ってこれない害虫が下水から上ってきてしまうこともあります。
空き家が及ぼす家の外の変化
そして、家の外です。外周は、毎日強い紫外線があたり、表面を高温にし、乾燥させます。乾燥すると木にはヒビが入り割れてきます。梅雨に雨が振り続けると、ヒビの入った木の隙間から雨水が内部に染み込みます。
梅雨の時期は高温多湿になりますから、カビや微生物の繁殖も活発になり、木を腐らせ、いずれぼろぼろにしてしまいます。そして、家の中に害虫が住みやすい状況を作ってしまいます。
冬になれば雪やみぞれが氷となり、木の隙間をひろげ、木製部分を強く傷めます。敷地内に雑草が生い茂ったり、犬や猫などの小動物が住み着いたりすると、それらの糞などの影響で悪臭が発生する恐れがあります。最近では、アライグマやハクビシンなどの害獣被害も増えています。
空き家を維持するための経費を計算してみる
今まで見てきたような空き家の状態にしないためには、家の維持が必要です。どれくらいの費用がかかるのでしょうか。
固定資産税
まず、固定資産税がかかります。固定資産税は、毎年1月1日現在で所有している土地や家屋に課される税金です。固定資産税の標準税率は1.4％で、固定資産の評価に対して課されます。
建物のある、200平方メートル以下土地については、軽減措置が適用され住宅用特例として、評価額の6分の1が課税額になります。建物がある土地には、軽減措置があり、固定資産税が安くなるため、空き家となっても、そのままにしておくことが多くなっています。
例えば、課税標準額（評価額）が2,000万円なら、固定資産税は28万円となります。
2,000万円 × 1.4% = 28万円
200㎡以下の住宅用地特例と呼ばれる軽減措置に該当すれば、評価額の6分の1が課税標準額となる4万7千円ほどに減額されます。
2,000万円 × 1.4% × 1/6 = 4.666万円
しかし、住宅用地特例制度が空き家を増加させる原因になっているとして、2015年度の税制改正では、危険な空き家は優遇措置から外されることになりました。空き家にしていて管理ができていないと、固定資産税が6倍になるおそれがあります。
都市計画税
都市計画法により、市街化区域とされている地域の土地や家については、都市計画税が課税されます。都市計画税の上限は0.3％です。都市計画税の税率は自治体により異なる場合がありますが、一般的には0.3％ですので、固定資産税評価額1,000万円の建物を所有している場合、都市計画税は次のようになります。
1,000万円×0.3% = 3万円
都市計画税にも、住宅用地特例があり、最大3分の1までが軽減されます。土地が住宅用の土地で200㎡以下の場合、1/3になります。例えば、固定資産税評価額1,800万円の土地を所有している場合、都市計画税は次のようになります。
1,800万円×1/3×0.3% = 1.8万円
火災保険
火災保険の費用は保険の保障内容や契約期間、その建物の構造や立地、築年数などで大きく異なります。目安としては、年間数万円～数十万円程度の保険料が必要となってきます。
その他の費用
家の様子を見に行き、電気や水道を使えるようにしておくと、毎月水道料基本料金が約2000円、電気基本料金1000円の約3000円がかかります。また、外壁の補修や庭木の剪定、草刈などにも費用がかかります。場所によっては、草刈り等ででたゴミの処理費もかかります。
マンションなどの集合住宅では、毎月管理費・修繕積立金が徴収されます。新築マンションの管理費の平均は、平米あたりの管理費単価は216.43円、修繕積立金の目安は200円だそうです。70平米のマンションなら管理費で1万5150円、修繕積立金で1万4000円、合計約3万円がかかることになります。
いろいろと費用がかかることはイメージできたと思いますが、マンション、一戸建ていずれも空き家を維持するのに、いったいどれくらいの金額がかかるのでしょうか。ざっくりとですが、計算してみました。
【都内にあるマンションの維持費】
設定条件として、建物の専有面積は70平方メートル、共有部分の持分を加えた面積が90平方メートル、土地の持分面積は20平方メートルとしています。また、土地評価額は900万円、土地持分評価額1200万円としています。
固定資産税 15万4000円
都市計画税 3万3000円
光熱費（電気・水道） 3000円×12ヶ月＝3万6000円
管理費 1万5150円×12ヶ月＝18万1800円
修繕積立金 1万4000円×12ヶ月＝16万8000円
合計 57万2800円
【地方の木造一戸建ての維持費】
設定条件として、建物の延床面積は150平方メートル、土地の面積は150平方メートルとしています。また、土地評価額は900万円、土地持分評価額1800万円としています。
固定資産税 16万8000円
都市計画税 4万5000円
光熱費（電気・水道） 3000円×12ヶ月＝3万6000円
管理費（家屋の補修、樹木の選定など） 30万円
合計 54万9000円
さらに空き家が遠方にある場合は、そこへ行くまでの交通費がかかります。時間とお金がかかりますね。また、家の管理はそこそこの重労働になりますので、終わった後に疲れがたまって、それを解消するためにマッサージに行ったり、家事ができなかったりして外食なども増えるかもしれません。いずれにしても年間50万円以上の維持・管理費用がかかることになります。
まとめ
誰も住んでいないとしても、空き家を維持するためには、それなりの最低限の維持や管理が必要になってきます。空き家の管理がどうして必要なのか、また、空き家の管理にどれくらいの費用がかかるのかについてみてきました。
空き家になると、家の中を締めきっておくと、熱や湿気が室内にこもり、木製部分が傷みます。熱や湿気がこもっている室内環境は、木を餌にする虫にとって快適なため、活発に活動できる状況を生み出してしまいます。
家の外は、毎日強い紫外線があたり、表面を高温にし、乾燥させます。乾燥すると木はヒビが入り割れてきます。梅雨に雨が振り続けると、ヒビの入った木の隙間から雨水が内部に染み込みます。雨もりや外壁の崩れ、屋根や軒先の壊れなどもでてくるかもしれません。また、敷地内に雑草が生い茂ったり、犬や猫などの小動物が住み着いたりすることもあります。ですから、定期的な管理をすることが必要になってきます。
しかし、空き家を管理するのに、固定資産税や都市計画税に加えて、光熱費（電気・水道）、管理費がかかり、さらに空き家の場所が遠ければ交通費や時間もかかります。総額すると、年間に50万円以上の費用がかかることになってしまうのです。
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